2025/07/30 お知らせ
実は身近なB型肝炎 偏見持たず正しい知識を
こんにちは、弁護士田村ゆかりです。
私が投稿したものが2025年7月27日の琉球新報に掲載されました。
宜しければご一読ください。
大学生のころ、体の怠さが毎日続いて動けなくなり、病院で検査を受けた結果「B型肝炎を発症しています」と告げられました。すぐに入院するよう指示を受け、医師の許可がないと入浴もできない入院生活が数か月続き、休学中の大学への復学を諦めなくてはなりませんでした。地元の病院に転院したところ慢性肝炎から肝硬変に症状が悪化している可能性があると指摘され、インターフェロン注射を1日おきに受けました。注射をすると高熱、悪寒、頭痛、吐き気が出て、寝ることもできませんでした。8か月の入院を経て退院できたものの通院治療は続き、18歳で発症した私が日常生活に戻るまで5年かかりました。
これは、注射器の回し打ちによりB型肝炎に感染した方が実際に体験したことです。この方は発症から数十年経過した現在も定期検査を受け続けています。
注射針や注射筒を換えないまま回し打ちをすると肝炎が感染することは戦前から知られていました。当時の厚生省はこの事実を認識し、WHOから勧告を受けていたにもかかわらず、昭和63年ころまで回し打ちを黙認しました。集団予防接種によるB型肝炎の感染者は、厚労省の推計で全国で45万人に上ります。
平成元年札幌地裁に5人の被害者が提訴し、最高裁が平成18年にその原告らがB型肝炎ウイルスに感染した原因は集団予防接種にあるとして国の責任を認めました。平成23年には国が法的責任を認めて正式に謝罪し、全国B型肝炎訴訟の原告団弁護団との間で被害者を和解によって救済する基準などを定めた基本合意が成立しました。
沖縄においても基本合意成立後から提訴を続けており、現在の沖縄原告団弁護団における提訴済み被害者数は456人に上ります。しかし、まだ集団予防接種によってB型肝炎に感染しながら、提訴して給付金を受け取っていない方が多数おられます。これまで肝炎検査を受けたことがない方は、保健所で無料で受けられる血液検査を是非受けて下さい。
また、B型肝炎は、性交渉や血液が傷のある皮膚に接触するなどで感染する可能性がありますが、握手、ハグ、食事を共にするなどで感染するものではありません。感染者が病気だけでなく偏見で苦しむことのないよう正しい知識を持ってほしいです。
7月28日はWHOが定めた世界肝炎デーです。B型肝炎ウイルスを発見し、後にその診断法とワクチンを開発したアメリカの医学者バルーク・ブランバーグの誕生日に由来します。日本でも同日を日本肝炎デー・肝臓週間として啓発イベントなどが開催されます。これを機に、実は身近なB型肝炎について知ってもらえると嬉しいです。
でいご法律事務所
弁護士田村ゆかり
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